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『硝子の塔の殺人』

2021年8月18日

家で過ごす時間が増えた今こそ、
気軽に自分のペースで楽しめる読書をしてみませんか。
それも長編のミステリにどっぷりつかるのはいかがでしょう?

今日ご紹介するのは、今話題のミステリです。

『硝子の塔の殺人/知念実希人(実業之日本社)』


著者の知念実希人(ちねん・みきと)さんは、
これまで『仮面病棟』が映画化、『神酒クリニックで乾杯を』がドラマ化されたほか、
3年連続で作品が本屋大賞にノミネートされるなど人気のミステリー作家です。

新作の『硝子の塔の殺人』は、作家デビュー10年の記念の作品で、
知念さんが本格ミステリを手掛けたのは今回が初めてだそうです。

また、知念さんは作家でありながらお医者様でもあります。
新作の『硝子の塔の殺人』も男性の医師が主人公です。

物語の舞台は、いかにもミステリ作品に出てきそうな雪深い山奥に立つ硝子の塔です。
地上11階、地下1階の円すい型の建物です。

この硝子の塔の主人は大のミステリ好きで、
館内には国内外のミステリ小説やミステリ映画などの貴重な資料が収蔵されています。
また、キッチンやシアターのほか、ゲストが宿泊できるお部屋もあります。

主人公の男性医師は、この館の主人の専属医をしています。

ある日、館の主人の呼びかけで、刑事、霊能力者、小説家といった
これまたミステリ作品によく出てきそうなゲストたちが硝子の塔に招かれます。
ちなみに全員、癖強めです。

そして予想通り館内で次々と人が殺されていきます。

さらに近くで雪崩が起き逃げることもできなければ、
電話もネットも使えなくなってしまいます。

状況が悪化していく中、主人公の男性医師は
自称名探偵の女性とともに事件の謎を追っていきます。

この自称名探偵は、探偵としては優秀なのですが、
大のミステリ好きで、シャーロック・ホームズのような格好をし、
どんな話をしていても大好きなミステリの話に脱線していきます。

そんな彼女に呆れたり尊敬したりしながら
医師は彼女とともに事件の真相に迫っていきます。

果たしてこの硝子の塔には、どんな謎が隠されているのでしょうか。

というお話なのですが、設定も登場人物も
いかにもミステリという感じのお話なのですが、
この作品は「二度読み」したくなると言われ、
SNSなどでは「面白かった」と話題になっています。

正直なことを申しますと、
読み始めてしばらくは、わりとよくあるタイプの話だなと思いまして、
この作品のどこが二度読みに値するの?
犯人はもう明らかにあの人じゃん!
ま、そんな単純な話ではないにしても
ここから話が発展していくようには思えないのだとけど…
と、やや冷め気味のまま読んでいました。

しかし、最後まで読んで私がしたことは、
最初のページから読み直したことでした。(笑)

ああ、私は絶対に二度読みなんてしない、と思っていたのに〜!
まんまとやられました。

この本は500ページ以上ある長編なのですが、
もう一度頭から読みたくなるってことは、
つまりこれはもう1000ページの本ってことでいいと思うわ。(笑)

ネタバレになるので2回目を読んでどう感じたかは言えないのですが、
とにかく一気読みからの二度読みをしたくなるというか、してしまった作品でした。

最初は、このお話、二度読みしたくなる?と思うかもしれませんが、
そこでやめずに最後まで読んでください。
後半、どんどん面白くなっていきますので!

こういう本こそ、時間のある時にオススメです。
なんといっても実質1000ページですから。(笑)
著者から読者へ送られた「挑戦状」をあなたも受け取ってみませんか。

きっと時間を忘れて作品の世界に没頭できると思います。

***

ところで、この作品にはミステリ愛が詰まっています。
主人公をはじめメインの登場人物たちがミステリ好きなので、
国内外のミステリ作家や作品が次々に登場します。

そういう意味では、ミステリ好きの方は、
登場人物たちに共感したり突っ込んだりしながら楽しめると思います。

逆にミステリに詳しくなくても大丈夫です。
ミステリ好きな登場人物の皆さんが、
ミステリの魅力や歴史、読み方を教えてくださいますので勉強になります。

それから、本の帯にはミステリ作家の皆さんのコメントがのっているですが、
本を最後まで読んだ後、あらためてコメントを読んでみてください。
きっと「そういう意味だったか!」と思えるコメントに気付くと思います。
これは最後まで読んだ人だけのお楽しみ。
ふふふ。

yukikotajima 9:28 am