ブログトップページはコチラ

『花の子ども』

2021年6月16日

今度の日曜日、6月20日は「父の日」ですね。

お子さんのいるお父さんたちは、
いつ自分が「父親」であることを実感しましたか?

妊娠を告げられたとき?
子どもが産まれたとき?
自分と似ている部分を見つけたとき?

今日ご紹介する本は、こちら。

『花の子ども/オイズル・アーヴァ・オウラヴスドッティル
訳:神崎朗子(かんざき・あきこ)【早川書房】』

この本は、アイスランド女性文学賞を受賞した
アイスランドの作家による長編小説で、
日本をはじめ24ヵ国で翻訳され、
フランスでは40万部のベストセラーとなるなど、
今、世界中で話題となっています。

アイスランドというと、どんな印象をお持ちですか?
冬が長く、オーロラが楽しめる場所としておなじみかもしれませんが、
実は、ジェンダーギャップ指数が11年連続世界一位、
世界平和度指数は13年連続世界一位と、
すべての人にとって生きやすい成熟した社会を目指し続けているのが、
アイスランドという国なんだそうです。

ご存じでしたか?

『花の子ども』は、そんなアイスランドの小説家が書いた家族の物語です。

主人公は22歳のロッビという男性です。
一年半前に母を亡くし、父と二人で暮らしています。
また、自閉症で施設で暮らすイケメンでオシャレな双子の弟もおり、
時々家族で食事を楽しむなど関係は良好です。

ロッビは、優秀な成績で高校を卒業したものの大学には進学せず、
亡き母が遺した希少なバラを外国の修道院にある歴史あるバラ園に植えたいと
バラを持って旅に出ます。

彼は亡き母と家の庭で土いじりをするのが好きだったのです。

しかし、旅に出た途端お腹が痛くなって病院に行く羽目になったり、
森ではさまよったり、一人旅のはずが人と一緒に旅をすることになったりと
予定外のことばかりが起きます。

そして、長旅の末、庭園に到着するのですが、庭園は見渡す限り荒れ放題。
でも、彼は、しばらくは取り組むべき仕事があるから
将来のことを考えなくてすむぞと思います。
大好きな土いじりをしながら考えればいいかと。

そんなある日。
かつて一夜をともにし、彼の子を産んだ女性から
「一ヶ月、子どもを預かってほしい」とお願いされ、
彼は9か月の赤ちゃんと暮らすことになります。

***

主人公のロッビは、穏やかな性格で怒ったりはしません。
亡き母の大切なバラを歴史のあるバラ園に植えたいという思い以外は、
基本的には流れに身を任せて生きているところがあります。良くも悪くも。
そもそも、よく知らない女性との間に子どもができたのに、どこか他人事ですし。
それどころか、旅で女性と出会う度、あわよくば…と妄想ばかりしています。

性格が悪いわけではなく、自分に自信がないのです。また、幼い。

そんな彼が突然、娘と暮らすことになり、少しずつ変わっていくという物語です。

ここからの物語がとても良かったです。
それまでは、どこか淡々としていましたが、
赤ちゃんが現れてからは、一気に躍動感が出ます。

ぜひロッビの成長を見守りながら読んでみてください。

***

翻訳本というと難しそうな印象ですが、
この本は全体を通して、穏やかな語り口でユーモアもあって読みやすかったです。

そう、穏やかなのです。
設定だけを聞くともっと修羅場的な雰囲気になりそうですが、そうはなりません。

実はアイスランドでは、子どもが生まれることを理由に
結婚する人は決して多くないのだそうです。

また、冒頭お話した通り、ジェンダーギャップ指数も世界一です。

とは言え、この作品が2007年にアイスランド女性文学賞を受賞した際には、
「アイスランド文学において、新たな男性像が描きあげられた」と評されるなど、
この本が書かれた際には、まだまだジェンダーギャップがあったようです。

14年前の本ですが、今の時代を切り取ったまさに「旬」の本だと思いました。

生き方なんて人それぞれで、私はこう生きていこう!と決めても
その通りにいくとは限らないわけで(実際私もそうですし)、
もっと自由に選択していけばいいのかもなと思いました。
若者も大人も男性も女性も。

今日は父の日を前に、新米パパの物語をご紹介しました。

男性だけでなく女性もぜひ読んでみてね!

yukikotajima 11:03 am