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『ワイルドサイドをほっつき歩け』

2020年6月17日

去年話題となり、今もなお売れ続けている本があります。

ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』です。

こちらは小説ではなくノンフィクションです。
イギリスに住む著者の中学生の息子について書かれています。

いじめ、喧嘩、差別のある中学に入学した息子君が
それぞれの問題に真剣に向き合って
何が正しいのか考えていくという内容で、この本が大ヒット!
私も去年読んだ中で一番良かった本に挙げました。

◎私の感想は コチラ

ブレイディさんは、この本が大ヒットしたことで
テレビや雑誌でもお見掛けするようになり、今やすっかり時の人です。

今日は、そんなブレイディさんの新作
『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち(筑摩書房)』
をご紹介します。

この本をプッシュされているのは、紀伊國屋書店富山店奥野晃英さんです。
まずは、奥野さんの推薦コメントです。

***

軽い気持ちでイギリスのEU離脱に「賛成票」を投じたおじさま。
その結果、家庭内に嵐を巻き起こし、まさかの微笑ましい結末を迎えることに…。

そんな激動する世界の中で右往左往する
おじさまとおばさま方を軽妙に描いた話題作。

現在もベストセラーとなっている
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
の著者ブレイディみかこさんの最新エッセイ集です。

***

そうなのです。
『ぼくイエ』は、イギリスの少年たちがメインでしたが、
今回は、イギリスの労働者階級のおじさま、おばさまたちのエッセイです。

いや、ブレイディさん風に言うならば、おじさまというより「おっさん」だな。
私も愛を込めて「おっさん」と言わせていただきます。

ブレイディさんは、『ぼくイエ』と同じ時期にこの本を書いていたそうで、
これら二冊の本は同じコインの両面であるとおっしゃっています。

『ぼくイエ』のキラキラした瞳で世界を公平に見ている少年たちと比べると、
おっさんたちのほうが、頑固で厄介でどうしようもなくて、子どもっぽく見えます。
でも、ブレイディさんは決しておっさんたちのことを悪く書いてはいません。
みんな不器用ながらもなんか憎めない人たちなのが伝わってきます。

例えば、スティーブという本好きのおっさん(ただし、こわもて)は、
通っていた図書館が緊縮財政で子ども遊戯室の一角に吸収されてしまっても
あきらめずに子どもたちが騒ぎまわる中、眉間に皺を寄せて読書をし続けます。
想像するだけで笑ってしまうシチュエーションですが、実はこれがいいお話で、
このエッセイは全体的に、何してるのよ〜!と笑いながらも
気づいたら涙も出ていたような感じなのです。

他にも、EU 離脱の是非を問う投票で離脱票を入れたことで
残留派の妻との関係が悪化してしまったおっさんもいます。

エッセイにはこうしたEU離脱をはじめとした様々な問題も描かれており、
おっさんたちの生活を通して今のイギリスを知ることもできます。

例えば、イギリスには誰でも無料で治療してもらえる医療制度があるものの
今や機能していないことで、病院を利用しづらくなっているのだとか。

そしてこれらの問題はすべて緊縮財政のせいだと
ブレイディさんは繰り返しおっしゃっています。

また、音楽が大好きなブレイディさんんらしく
この本にはたくさんの音楽が登場します。

本のはじめには、
「このエッセイには様々な曲が織り込まれていますので、
それを聴き、歌詞も調べていただけると楽しさが倍増するでしょう」
とあるほどです。

タイトルの『ワイルドサイドをほっつき歩け』も
ルー・リードの「ワイルド・サイドを歩け」からきているそうですよ。

様々な音楽に彩られたおっさんたちのエピソードは、
味のある映画のようでもありました。

おっさんたちは、何歳になっても恋をするし、新たな仕事も探すし、
でも体のことも気にしていて、そんなおっさんたちを見ていると
年を重ねるのも悪くないし、この先どんな風にも生きていけそうだなと思えて
本を読んだ後はとっても元気になっていました。

最近、「老害」という言葉でひとくくりにされがちなおっさんたちですが、
この本を読むと、おっさんたちに少しは優しくしてみようかな、と思えるかも⁉


<紀伊國屋書店富山店からのお知らせ>

エコバッグフェア


自然環境に優しい店舗を目指して、
紀伊國屋書店は7月1日からレジ袋が有料となります。

現在、店内中央イベントスペースでは、エコバッグの販売を行っています。
この機会にこれからのショッピングにピッタリの一枚をお求めください。

フェアはエコバッグが無くなり次第終了です。


絵本和書洋書併売フェア!


人気の海外絵本と日本の絵本の併売フェアを開催中です。

同じ絵本の英語版と日本語版を見比べてみませんか?
英語の勉強に役立てたり、プレゼントにも最適です。

フェアは、7月5日(日)まで店内中央イベントスペースで開催中です。
※洋書売り場ではありませんのでご注意ください。


<紀伊国屋書店富山店>

住所:   富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F
電話番号: 076-491-7031
営業時間: 10:00〜20:00

◎HPは コチラ

yukikotajima 10:12 am

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

先日、約3か月ぶりに映画館で映画を鑑賞してきました。

ステイホーム中、家で何本もの映画を見てきましたが、
やはり映画館の大きなスクリーンで見るのはいいですね。
それも新作を!

座り心地のいいシートに体をうずめて
目に入るのは巨大なスクリーンのみで
近所を気にする必要のない大音量!
そして、薄着だとちょっと寒いくらいの館内。(笑)
映画館では夏も羽織るものが必要なんだったと寒さで思い出しました。
そんなことも含めて久しぶりの映画館を楽しんできました。

また、初体験もありました。
入口で体温チェックがありましたし、
密にならないよう座席は減らされていました。

でも私が利用した日は平日の夕方ということもあり、ほぼ貸し切りでしたが。

今回私が見たのは、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』です。

若草物語は、ルイーザ・メイ・オルコットによる自叙伝的小説で
これまで何度も映画化、アニメ化されてきました。

私はまず、先日BSで放送されていた1949年版の『若草物語』を
おさらいがてら見てから、グレタ・ガーウィグ監督の新作を見てみました。

物語のベースは一緒でしたが、描き方は全然違いました。
新作の方は全体的に瑞々しく、透明感と躍動感がありました。
フレッシュでまぶしくて、まさに「若草」を彷彿とさせました。

そんなスクリーンからあふれ出る瑞々しさもあり
150年前を描いているのに、古さを感じさせませんでした。

それどころか内容も現代的で、今の女性たちの悩みがギュッと詰まっていました。

例えば、小説家になりたい次女のジョーは、結婚はしたくないと言います。
なんなら「自由な中年女になりたい」と。

思わずプッと吹き出してしまいました。
もしや私こそ「自由な中年女」なんじゃないかと思いまして。(笑)
まあ、私の場合、目指してなったわけではなく、
気付いたらこういう生き方になっていたという感じだから、
ちょっと違うかもしれないけど。
でも、「自由な中年女」って今もまだ珍しい存在なのですよね。
150年前から変わらないってどうなんだろう…。
私も差別的なことをよく言われるしなあ。

映画に話を戻します。
ジョー以外の姉妹にもそれぞれ悩みがあり、
生き方は違えど、みんな自分らしくいたいと思っています。

きっと女性の皆さんは、登場人物の誰かに共感するのではないかしら。
私は、やはりジョーかな。

この作品は、女性にとっての普遍的なテーマを
現代的な感覚を取り入れて描いているのがいいなあと思いました。
『若草物語』はこれまで何度も映像化、アニメ化されていますが、
やはり同じものを描いても、その時代の空気感は出ますよね。
新作は、今ならではのテンポやとらえ方が心地よかったです。

映画を見終えた後は、私ももっと自分らしく生きていきたいと思えましたし、
映画館を出る私の足取りもどこか軽やかでした。

◎『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の公式サイトは コチラ

yukikotajima 10:00 am