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アノニム

2017年6月14日

昨日、ツイッターを見ていたら、
気になるニュースが目に飛び込んできました。

それは、ニューヨークの近代画家ジャクソン・ポロックの作品が、
米アリゾナ州の個人のガレージの中から発見されたというものです。

この作品は、今月20日に開催されるオークションに
出品される予定なのだとか。

この記事を見たとき、
これは、実際のニュースなのか
それとも私が最近読んだ小説の紹介なのか
一瞬わけがわからなくなりました。

というのも、今日のユキコレ(grace内コーナー13:45頃オンエアー)
でご紹介する小説は、まさに
ジャクソン・ポロックの新作がオークションに出品される、
という物語なのです。

ちなみに小説は100%フィクションだそうですが、
まるでこうなることを予測したかのように思えて
興奮せずにはいられませんでした。

20日に行われる実際のオークションでも
小説のような出来事が行われたりして…と想像すると、
わー!
ますます興奮する!!
キャー!

…すみません。
ひとりで舞い上がりまして。

でも、この本を読んだ後に、このニュースを読むと
きっと私と同じ状態になると思います。

***

今日ご紹介する小説は、
先日、角川書店から発売されたばかりの

原田マハさんの新作『アノニム』です。

原田マハさんと言いますと、
『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』
といったアート小説でおなじみですが、
今回もアートがテーマとなっています。

ただ、今回はちょっと毛色が異なります。

これまでは、アンリ・ルソー、マティス、ピカソといった
モダンアートが主に取り上げられていましたが、
今回は、現代アートを代表するジャクソン・ポロックの作品が登場します。

ポロックは、戦後、NYを中心に活躍したアーティストで、
カンヴァスを床に置いて絵の具を垂らす
アクションペインティングと呼ばれる手法で
作品を制作したことで注目を浴びました。

***

『アノニム』は、このポロックの幻の作品をめぐって
謎のアート窃盗団と無名の高校生アーティストが活躍する
アドベンチャー小説です。

窃盗団といっても、盗まれた美術品を盗み返しているだけで
決して悪の集団ではありません。
ちなみに、著者の原田さんは、アート版のルパン三世をイメージされたのだとか。

その窃盗団の名前が、
小説のタイトルになっている「アノニム」なのです。

アノニムという言葉は「作者不詳」という意味で、
実際、この窃盗団は名前も肩書も隠して活動しています。

メンバーは、美術品修復家や建築家、アートコレクターといった
国籍も年齢も職業もバラバラの9人で構成されています。

彼らはそれぞれ本業でも活躍しているのですが、
皆、お互い尊敬し合っています。

たとえば、あるメンバーは、
「お互い持ち上げることを忘れないから、
 彼らとの仕事は面白い」
と言っています。

それ、よくわかるなー。
私もそういう方たちとの仕事は楽しいですもの。
チームワークは本当に大切です。

さて。
この物語、登場人物は多いですが、
本編の前にイラスト付きの人物紹介のページがありますし、
全員かなり個性的なので、話がこんがらがることはありません。

いや、こんがらがるどころか、大変読みやすかったです。
まるで漫画を読んでいる気分でした。

最初に目にしたイラストの印象が強かったのはもちろん、
影のヒーローたちが活躍する物語の内容が漫画っぽいなあと思いまして。
勝手に脳内で漫画に変えて読んでいました。

そして、読み終えた後、
これで「アノニム」とお別れは寂しいなあと思っていたら、
あるインタビューで原田さんが
「今後もアノニムのメンバーそれぞれにスポットを当てていきたい」
とおっしゃっていました。

それは嬉しい!

シリーズ化されたら、
漫画化なんてこともあるかもしれませんね。

アート小説というと難しそう!と思われがちですが、
この作品はアート・エンタテインメントですので読みやすいです。

ぜひ読んでみて下さい。

yukikotajima 11:17 am