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過ぎ去りし王国の城

2015年7月22日

現実逃避がしたくなると、私は物語の世界に遊びに行きます。

その扉は簡単に開けることができます。
本の表紙をめくるだけです。

小学生の頃、特に小学5年生の頃の私は、本の世界にはまりすぎて、
毎日本を読んでは物語の続きを勝手に考えたり
頭に浮かんだ世界を絵に描いたりしていました。

そのせいで成績が急降下。(笑)
父から読書禁止令が出たほどです。

大人になった今は、さすがに勝手に続編を書くことは無くなりましたが、
でも本を読むことは変わらず好きです。

今より若い頃は共感できる本が好きでした。
恋愛本や自分探しの物語を読んで、
悩んでいるのは私だけじゃないんだ!
と勝手に物語の登場人物と自分を重ね涙したことも多々ありました。(笑)

でも、上橋菜穂子さんの『獣の奏者』を読んで以来、
知らない世界を味わえることこそ読書の醍醐味じゃないか!と気付き、
それまで敬遠していたファンタジーの世界にも自然に入っていけるようになりました。

今日ご紹介する本はファンタジーです。
でも、軸の部分は非常に現実的です。

一体この先どうなるんだろうと、久しぶりにドキドキしながら本を読みました。

今日ご紹介する本は、

『過ぎ去りし王国の城 /宮部みゆき』

です。

タイトルを見た瞬間、昔のヨーロッパ貴族の物語?と思いきや、
表紙をよく見れば、古城は教室の黒板にチョークで描かれていますし、
本の帯にはネグレクトやスクールカーストという言葉が並んでおり、
どうやら現代の日本の物語、それも学校のお話であるらしいことが想像できます。

***

簡単にどんなお話かご紹介しますね。

主人公は中学3年生の男子の真(しん)。

彼はひょんなことから中世ヨーロッパの古城の描かれたデッサンを拾います。

家に持ち帰り、その絵に触れてみたところ、
絵の中に吸い込まれるような不思議な感覚を味わいます。

その後、絵の中にアバター(分身)を描きこむことで、
自分もその世界に入りこめることを突き止めます。

でも、絵の苦手な真の絵では絵の中の世界ではうまく動けないことに気づき
(棒人間は絵の中でも棒人間でした。笑)、
美術部の城田さん(女子)にリアルなアバターを描いてほしいとお願いします。

ここまでの紹介だと、中学生の男女の楽しい冒険物語か?と思われそうですが、
ちょっと違います。

真は友だちも少なくクラスでも目立たない存在ですし、
一方の城田さんは成績は優秀で絵もうまいものの嫌われ者です。

そんな2人が他の人にばれないようにしながら、
こっそり絵の中を冒険していく物語です。

そして、絵の世界の塔の中にひとりの少女が閉じ込められていることを発見し…。

途中、絵の中でパクさんというおじさんに会ったり、
絵の世界から現実世界に戻ったあとは体力の消耗が激しかったりと、
読み進めていくうちに絵の世界にまつわる様々な情報が増えていきます。

また、登場人物たちの闇も明らかになっていきます。

だからと言って暗いだけのお話ではありません。
また、非現実過ぎて話についていけないこともありません。
軸の部分はとても現実的ですし。

クラスで目立たなかったり嫌われたりしていた中学生たちが、
絵の世界を冒険する中で、どう変わっていくのか。

ぜひあなたものぞいてみてください。

この本は、中学生が主人公ということで文章そのものが平易で読みやすいので、
普段読書に慣れていない方や学生さんにもオススメです。

夏休み前に読んだら、この夏の過ごし方に変化が生じるかも!?

大人の皆さんもぜひ!
中学生たちから気付かされることもあるはずです。

私はこの本を読んでよかったです。

辛いことがあった時、その状況を受け止め前に進むためには、
自分の心が「前に進もう」と思わない限り、絶対に変わることはできません。

どんなに正しいアドバイスをもらったとしても、心が動かなければ意味がありません。

この本には、それをアシストする力があるように思います。

それこそ、絵の中に逃げられるのなら逃げたいよ!と思っている方は、
まずはこの本の中に逃げてみては?

最後はきっと素直な自分にちょっとだけ近づけるはずです。

『過ぎ去りし王国の城』の特設サイトは コチラ

なんと宮部みゆきさんご本人による、この作品の朗読も聴くことができます!

yukikotajima 11:28 am